横田英史の読書コーナー
倫理の死角~なぜ人と企業は判断を誤るのか~
マックス・H・ベイザーマン、アン・E・テンブランセル、池村千秋・訳、NTT出版
2013.12.27 12:00 am
人間の意思決定プロセスをミクロの視点から実証的に分析し、人や組織が不祥事を引き起こすメカニズムを解明するとともに、健全な企業組織を構築する方法を提示した書。倫理上のジレンマに直面した人間が、個人の心理や組織との関係の中でどのように行動するのかを解明する学問「行動倫理学」にもとづいている。興味深い視点を提供してくれる刺激的な書である。
筆者の問題意識は、人間はなぜ自分の倫理観に反した行動を取るのか、なぜ思っているほど倫理的に行動できないのか、なぜ他人の非倫理的行動に気づけないのか、なぜ倫理的な組織を築けないのか、なぜ改革が実現しないのかといった点にある。ポイントは「限定された倫理性」にあるというのが筆者の見立てである。ここでいう限定された倫理性とは、最も検討すべきデータは何かを考えることをせず、目前の簡単に手の入るデータに基いて性急に分析する性癖を意味する。平常心を失った結果、倫理上の問題を生じてしまう。筆者は行動倫理学の知見に基づき、意思決定の事前と最中、事後の三段階で倫理的意思決定を妨げる心理プロセスを提示する。それぞれの指摘は的確で納得できるところが多い。
書籍情報
倫理の死角~なぜ人と企業は判断を誤るのか~
マックス・H・ベイザーマン、アン・E・テンブランセル、池村千秋・訳、NTT出版、p.297、¥2940

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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