横田英史の読書コーナー
フクシマの正義~「日本の変わらなさ」との闘い~
開沼博、幻冬舎
2013.6.15 12:00 am
この書評でも取り上げた「漂白される社会」で今注目の若手社会学者・開沼博の前著である評論集。雑誌や新聞などで発表した福島原発事故関連の原稿を集めたものなので、ダブり感や整合性の面で気になる所が散見される。しかし筆者の地に足の着いた社会観、問題意識の確かさがよく分かる内容になっており悪くない。知識人・識者と呼ばれる人たちが、傷つかないポジションから上からものを言う言説への違和感、原発事故で浮き彫りになった都会で論じられる“フクシマ”と実際の“福島”との乖離などを鋭い切り口で論じている。評者には共感できる観点が多く、筆者の処女作(出世作)『「フクシマ」論~原子力ムラはなぜ生まれたのか』をさっそく発注してしまった。
筆者は原発事故後に急に原発を語り出した識者たちの姿に、善意同士のぶつかり合いを見る。他者の苦痛に対して「善意」を装うが、自分の身に降り掛かってくると善意は分裂する。識者たちは一枚岩でなくなる。例えば異なる主張を持つ者が、互いにカルト団体のごとく罵倒しあう。「被害者」や「弱者」を見出し、鬼の首を取ったように大騒ぎするが、根無し草のパフォーマンスに過ぎない。エンターテイメント化したTV番組や週刊誌で見た風景だろう。言説の軽さにウンザリした方も少なくないのではないか。
筆者の目は原発事故を超え、「変わる変わる詐欺」を繰り返した日本の戦後社会を見据える。日本の知識人は問題の原因を「悪」のせいにし、自分を安全地帯(筆者は後出しジャンケンと表現する)に置いて免責された気分になり、解決すべき問題の放置を繰り返した。当事者を振り回すだけ振り回して、結局何も解決していない。沖縄しかり、福島しかりである。瞬間的に大騒ぎをするが何も変わらない。しょせんは他人ごとでしかない識者たちによる忘却の反復運動が延々と繰り広げられているというのが、戦後社会に対する筆者の見立てである。辛く厳しい指摘だが、頷けざるを得ない。
書籍情報
フクシマの正義~「日本の変わらなさ」との闘い~
開沼博、幻冬舎、p.380、¥1,890

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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