イベント・リポート NO-12
ET2004
11月17日-19日 パシフィコ横浜

リポータ : EIS編集部 中村

NO−3

最終日を迎えた11月19日は、朝から小雨がぱらつく、生憎の天候であった。
最終日のカンファレンス・プログラムは、NTTレゾナント(株)コミュニケーション事業本部サービス運用部の米川達也部長による基調講演「ブロードバンド&ユビキタスが実現する次世代コミュニケーション環境」から開始された。米川氏は「現在の日本におけるコミュニケーション環境は、海外の先進各国に比較してデータ転送レート当たりの使用料金がもっとも安く、恵まれた環境にある。今後は下りのスピードのみを競う時代から上り下りの双方向で高速データ転送が実現され、真のブロードバンド時代に入る。これによって、新たなサービスやビジネスの形態が生まれる。」と、具体的なデータや自社での応用例を示しながら解説した。

 

最終日の基調講演に登場した米川氏

展示会場のほうは、雨模様の天候にもかかわらず、2日目と同様、各ブースはかなり混雑しており、各ブースで行われているプレゼンテーションに熱心に聴き入る来場者の姿が目立った。

 

混雑する3日目の会場

 

プレゼンテーションに熱心に聴き入る来場者が目立った会場
ルネサス・テクノロジ(左)と横河ディジタル・コンピュータ(右)のブース

 

NECエレクトロニクスのブースでは、根木氏のTエンジンに関するミニ講演が大人気

 

ここ数年のETでは、パートナーとの共同出展を充実させたブースが確実に増加している。インテル、日本TI、アーム、ザイリンクスなど各社は、今年もパートナーとの共同で大きなブースを構え、自社製品(プロセッサ、DSP、FPGA)の開発環境、リファレンス・ボードを含む幅広い応用例を示していた。ETでは、共同出展するパートナー企業も公式ガイドブックやwebサイトで通常の出展社と同様に詳しく紹介されている。

 

パートナーと共同出展によるソリューション展示を行ったTI(左)とインテルのブース(右)

共同出展といえば、ETアワードのJASA特別賞を受賞したTOPPERS/SESSAMEパビリオンも今年、目立ったブースのひとつだった。オープン・ソース化した、iTRON仕様RTOSの普及を目指すTOPPERSプロジェクトに参加する複数の企業を中心にしたブースでは、TOPPERS PROJECTのリーダー、高田広章名古屋大学教授などがプレゼンテーションも行ない、多くの聴衆を集めていた。

 

TOPPERS/SESSAME パビリオン

 

高田教授がプレゼンを始めると、すぐに人だかりができる。

ET2004では、TOPPERS/SESSAMEパビリオンの他に、昨年に引き続いてインド・パビリオン、ITS-Japanパビリオン、Universityパビリオンの特設ブースが設置されたが、今年新たに登場したのは、外国系半導体商社協会と日本電子機器輸入協会の両団体が合同で出展したDAFS/JEPIAパビリオン。ここでは、両団体の加盟している企業が、組み込み技術に関連した海外製品を展示していた。また、富士通グループのブースでは、取り扱い製品やビジネス・モデルが異なる富士通グループの各社が今年も統一されたデザインの合同ブースで出展した。富士通グループのブースは、ハイ・グレードな雰囲気を漂わせるデザインでも目立った存在であった。

 

DAFS/JEPIAパビリオン

 

富士通グループのブース

今年のETでは、事前登録者と特別招待者の専用受付デスクが設けられ、昨年よりも入場がスムーズだったとの声がきかれた。また、今年から、出入り口に付近に「新製品紹介ボード」が設置され、入場前、および見学を終えた来場者に新製品を展示している出展企業と製品情報が提供された。今年から会場内の2箇所に設置されたインターネット・アクセス・コーナーも来場者、出展社の多くに利用されていた。

 

専用受付デスク

 

新製品紹介ボード

さて、最終日のパネル・セッションは、日経エレクトロニクスの浅見編集長がモデレータを務めた「日本回帰のものづくり論」〜日本のディジタル家電は世界に羽ばたけるか〜であった。パネリストには、松下電器、ソニー、セイコーエプソンの各社からの代表に、市場調査会社のディスプレイサーチ社が加わった。このパネルでは、薄型TV、DVDレコーダ、ディジタル・カメラなど日本発のディジタル民生機器がここ2年程好調に推移し、これに伴ってこれらの生産基地が日本に回帰している傾向が見られるが、果たして、この傾向は来年も続くのか?また、これら日本発のディジタル民生機器を世界市場にさらに浸透させるためには、何が課題か?が、熱心に討議された。この中で、パネリストの一人が「ソフトウェア開発が日本における今後のものづくリの鍵だ」と発言したらしい。確かに、ソフトウェアの開発コストはハードウェアの組み立てコストよりも大きな比重を占めることだけは間違いなく、今後のものづくりを考える上で、半導体を含むハードウェア基幹デバイスと共にソフトウェア開発力の強化が非常に重要な要素となってきているようだ。

 

3日目のパネル・ディスカッション

今年のET2004では、有料のセミナーとして、展示会開催前日の11月16日に「チュートリアル・セッション」が、展示会の会期中は各日、4講演、計12講演のテクニカル・セッションが実施された。チュートリアル・セッションでは組込みLINUXやTEST技法などが人気を集め、テクニカル・セッションでは組込みソフトウェアのプロセス改善、車載用組込みソフトの標準化動向、マルチプロセッサ技術などへの関心の高さが目立った。また、新しいホームネットワーク技術のDLNA、地上波ディジタルTV放送、PCI-Expressなど最新技術に関するセミナーにも多くの受講者が集まった。

 
 

テクニカル・セッションで講演するゼンテックの星氏(左)とNECエレクトロニクスの西野氏(右)

 

昨年のET2003では、日本の地上波ディジタル放送に採用された動画圧縮・伸長方式、H.264/MPEG-4 AVCに対するソリューションを展示したブースが人気を集めたが、ET2004では昨年よりもさらに多くの出展社がH.264に対するソリューションを展示していたのが目立った。また、ソフトウェア開発の生産性や品質を高めるための手法やツールに対する関心が高かったのも、今年の特徴だったかもしれない。さて、来年のET2005でのキーワードは何になるのでしょう?

 

ET2004は、3日間で計21,300名という、過去最高の来場者を記録して無事終了した。

 
 

今年もH.264のエンコーダ/デコーダをデモしたロイノスのブースと
ETでは、すっかり有名になったロイノス・ガール

 

最後に
今年のET2004では、運営事務局の仕事に忙殺され、各出展企業のブースに展示された製品を取材することができず、会場の雰囲気だけを伝えるリポートになってしまったことを深くお詫びします。来年は、取材方法を再検討せねばなりません。

 

写真提供:日本システムハウス協会

 

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