第2回 文献ポインタ集に魅せられて

もう3月なんですね…

当コラム案内人の渡辺のぼるです。いやぁ〜 暖かい日が増えてきましたね。年度末も近づき忙しい毎日ですが、忙しさを楽しむ今日この頃。忙しいと言いつつ、展示会見学やセミナに参加してました。
展示会は「NET&COM2004」(2/4〜6、幕張メッセ)。会場が職場から歩いて10分なので散歩ついでに見に行きました。最近、専門分野であるネットワーク関係から少々離れていたので、理解できない用語もチラホラと。技術のスピードなのか、サボりによる衰退なのか... きちんと勉強&最新技術収集をしてないとダメですね。反省する良いきっかけになりました。(^^;

セミナは2/18に虎ノ門パストラルで開催された「IPA未踏事業成果報告会・Emblix NPO法人設立記念セミナー」に参加してきました。ざっと100名以上の人が来場され賑やかでしたね。見渡せば、業界の重鎮の方々だらけ。前回のコラムで紹介した経済産業省情振課の久米さんによる"組込み元年"講演もありました。未踏事業成果報告やEmblix関係のお話を聞き、担当業務的にもSESSAME的にも良い刺激を受けました。そんな中、重鎮のお一人からは、「渡辺さん、こんなところに来ている余裕があるの? 例の進捗はどうなの?」って手厳しい御意見を頂戴しちゃいました。(T.T)

と前振りの近況報告が長くなってしましたが、今回からはお約束どおり「SESSAMEの愉快な仲間たち」に登場してもらいます。組込みソフトウェアの管理者・技術者育成に取り組む方へのインタビューを通して、SESSAME活動などを感じ取っていただければ幸いです。

今回が初回の「SESSAMEの愉快な仲間たち」は、(株)テクノホロンの三浦さんです。三浦さんは、文献ポインタ集の作成や、SESSAME主催セミナーにおけるマネジメント関係の講師などをされています。僕がSESSAMEに入会したきっかけは、三浦さんがまとめあげた文献ポインタ集に感銘を受けたことだったのです。そんな訳で今の僕がここに居るのは三浦さんのおかげであり、とても感謝してます m(_ _)m ということで、愉快な仲間たちの第一弾は三浦さんにお願いしたのです。

システム屋の三浦さん

渡辺

三浦さん、よろしくお願いしますね。

三浦

こちらこそ。お手柔らかにね。

渡辺

三浦さんは組込み業界に長く携わっているイメージがありますが、もうどれくらいになるのですか?

三浦

僕は組込みといってもいわゆるメカトロニクス分野なのだけれど、ざっと20年かな。このうち半分は普通のソフトハウスに居て、メカトロ周辺のネットワークの仕事を主にしていたので、べったり10年、つかずはなれず10年といったところだと思う。実質的には渡辺さんが見るほど長くはないんですよ。おまけにプログラムを書いていたのはのべで10年ちょっとというところ。あとは工程計画や提案書や、まぁお絵かき中心かな。

渡辺

三浦さんが組込みソフトに関わったきっかけって何なんですか? "三浦さん=システム屋"ってイメージがありますが、元はソフト担当?ハード担当?まさか最初からシステム屋ってことはないですよね?

三浦

最初はメカトロ機器のエレキ屋。そのうちに「お前の作った基板のためのソフトを書け」というところからずるずるどっぷんとソフトに漬かっちゃった。エレキ屋時代は数年と短いのだけれど、いい経験になりましたよ。間違いなく今の自分の基礎のひとつになっている。ソフト屋になってからはテストの時に何かトラブルがあるとすぐハード屋からソフトのバグだろうって言われてね。悔しくて、原因がハードだってことを見つけたときは嬉しかったね(笑)こういったトラブルシューティングも僕の基礎のひとつ。こんなことをやっていたらいつの間にかシステムについていけしゃあしゃあとしゃべれるようになっていた、というところかな。
話がちょっと飛ぶけどね、以前にSESSAMEの例会でしゃべったのだけれど、システム屋って俯瞰力が重要だと思うんですよ。それってプロジェクト管理と共通点がある。学生時代に先輩から地図の楽しみ方をいろいろ教えていただいてね、地図をかなり買っていたのだけれど、その、地図を見る、とか地図を読むといったのがたぶん僕にとって俯瞰のトレーニングになっていたんじゃないかな。

渡辺

なるほど、システム屋とプロマネに必要なのは俯瞰力って納得できますね。ところでプロジェクトマネジメントといえば、スキル標準の項目設定をワーキンググループで検討中なんですよ。PMBOKもプロマネ作業を俯瞰していると思うけど、組込みソフトとPMBOK的なマネジメントの差異というか、組込みソフトにおけるマネジメントの特徴って何ですかね?

三浦

僕が経験と勘でやってきて、後からPMBOKの解説本を読んだら「あ、おんなじこと言ってらぁ」だったのだけれど(笑)抽象的なレベルでは同じだと思うね。具体的な適用レベルでは管理領域としてメカエレキソフトがあるところは特徴なのではないかな。ただ、PMBOKにせよなんにせよ、気をつけなければいけないと思うのは、これらはみなガイドライン、要点集でしょう。すべてをまもらなければならない、というものでも、ましてや資格を取ることが目的となるようなものではないですよね。あくまでもプロジェクトをきちんとソフトランディングさせるために何に留意し、なにをすべきかというガイドラインだと思っています。

文献ポインタ集

渡辺

僕はSESSAMEに入会したのは文献ポインタ集に感銘を受けた事がきっかけなんですよ。この文献ポインタ集を作るきっかけって何かあったのですか?

三浦

それはとても嬉しい話だね。文献ポインタは初期の SESSAME の会合の中で「成果物としてポインタ集を作ろう」という議論があって、要求分析などの開発工程ごとにワークグループを作ってその中で文献情報の収集を行っていただいたものがベースになっています。ほかの成果物もそうなのだけれど、SESSAME メンバーの活動がなければ文献ポインタ集は無かった、ということは書いておいてね。

渡辺

はいはい。と言うかそのまま掲載されますのでご安心を。ところで文献ポインタ集の作成での苦労はあります?

三浦

僕はいわばまとめて体裁を整えた、というレベルでしかないのだけれど。あ、もちろん僕の推薦文献もリストアップされてるけどね。ワークグループ毎のまとめの体裁がそれぞれ微妙に異なっていて、それを合わせるのがひと仕事だったね。同じ書籍に対する記載情報に差があったりして。まだ一部にそういうところが残ってるけど。

渡辺

これからの文献ポインタ集の目指すところは? 僕としては、SESSAMEスキル標準の分類・項目対応にして欲しいと思っているのですが.... (^^;

三浦

それはぜひやりたいよね。あとは、第2版から加えたシステム設計の項目充実と、保守関連書籍を集めた新たなページの追加、それと文献リストを参照する方の便宜のために、できるだけ多くの書籍に SESSAME メンバのコメントを入れたいと考えています。これらを含めて第3版としてリリースするつもり。それから全体のボリュームが大きくてどれから読んだらいいの、という声が多いので、SESSAME メンバーの推薦文つきでそれぞれの分類項目ごとに数冊にしぼったエッセンスリストつくりもやりたいね。いくつかの版に派生していくことになるんじゃないかな。うーん、そうすると情報をデータベースで管理しないとだめになりそうだなぁ。

渡辺

第3版リリースとデータベース化、期待してますよ。そろそろ春なので文献ポインタ集の中から、若手エンジニア(SESSAMEで言う初級)にお勧めの本を教えてください。これだけは抑えておけ !! って本を3冊くらい教えてくださいよ。

三浦

早く言ってよ、そういうの(笑)品揃えに定評のある本屋に行って、そこから3冊選べ、ってのと同じなんだから。
うーん、文章力をアップさせる本、テストの考え方をきちんと知る本、問題解決の考え方を知る本、を個人的にはぜひ読んで欲しいな。その観点で、独断と偏見で選ぶとこうなるかな。
「理科系の作文技術」(中公新書)
「基本から学ぶソフトウェアテスト」(日経BP社)
「ライト、ついてますか - 問題発見の人間学」(共立出版)

渡辺

ほぉほぉ〜。私は「基本から学ぶソフトウェアテスト」を、途中までしか読んでないや。「ライト、ついてますか - 問題発見の人間学」は未読ですが評判いいですよね。3月の課題図書にします。「理科系の作文技術」も未読ですが、私は理系でなく体育会系なので、お口に合うか... 立読みして考えます。

渡辺

最後に、今後のSESSAMEでの活動予定(目標)など教えてください。今年も三浦さんには、がんばってもらわないと。

三浦

SESSAME のメンバーといっしょに、管理者向けの教材やカリキュラムをもっと充実させたいね。それと平行して、ソフト屋からシステム屋に至る道筋の教材を作っていきたいね。あ、もちろん渡辺さんもいっしょにね。

渡辺

了解しました。システム屋の教材は欲しいと思っていました。喜んで協力しますすので、やってみましょう。インタビューは以上です。ありがとうございました。これからも御指導よろしくお願いしますね。

三浦

いやいや、指導だなんてとんでもない。SESSAMEのいいところはみんなして楽しんで、そして教材やカリキュラムを作りながら結局そのみんながスキルアップしているところだと思うね。いろいろやりましょ。

渡辺

僕はスキルアップアップ状態なのですが... 楽しませて頂きます。

ということで、私のSESSAMEという虎の穴に参加するきっかけを作ってくれた三浦さんでした。
私も”システム屋”を目指してがんばりたいと思います。

三浦さんが中心に作成された文献ポインタ集は、組込みシステム開発に関するナレッジデータベースのインデックスとして非常に有効なものであると思っています。見たことが無い方は、是非一度ご覧になってみてはどうでしょうか?SESSAMEのサイトから閲覧/Download可能です。
また、文献ポインタ集の拡充に協力してやろう!!って方や、「なぜこの本が無い!! この本を追加しろ!!」などご意見をお持ちの方は、SESSAMEに入会するか、Engineer - 組み込み技術者のためのMLに投稿してください。御賛同や御意見などお待ちしています。

3月は年度末であり、締め切りとなる作業が数件ありアップアップ状態です。さらにSESSAME合宿でも進捗レビューされるので胃が痛い今日この頃。まぁ、このプレッシャーを楽しみながら、がんばりまっす。それではまた。

バックナンバー

>> 第1回 2004年は"組込み元年"。皆さん一緒に盛り上がりましょう!!


渡辺 登

1986年、沖通信システム(株)に入社。加入者線装置,中継/伝送装置,PHS,携帯電話機などの組込みソフトウェア開発に従事。
リックテレコム社の情報処理(ネットワーク)試験対策本解説執筆や社内講師なども手掛ける。
SESSAMEでは、組込みソフトのスキル標準作成に関する草案作成とモデレータを担当。この流れから、経済産業省の"組込みソフトウェア開発力強化推進委員会準備会"に参画。
自称:組込みソフト・スキル標準エバンジェリスト。
特技はサッカー。しかし、プレー中に左膝前十字靭帯の切断により現役生活に幕を降ろしている。
メールアドレス:noboru2000gt@yahoo.co.jp