電力システム改革が切り開くICTの新地平

4月から実施される電力の小売全面自由化は、日本の電力システム改革の一部と位置づけられる。その改革が創出するIoT、ビッグデータ、人工知能の展望を「ENEX2016」で行われたエナリス代表取締役社長兼CEO・村上憲郎氏の講演から考察する。

スマートグリッドの完成が電力システム改革を支える

 

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講演するエナリス・村上憲郎氏

日本が進める電力システム改革は、2015年4月の電力広域的運営推進機関(OCCTO)の設立を第1段階として、電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進め、再生可能エネルギーなどによる全国大で平常時・緊急時の需給調整機能の強化が推進されてきた。この4月から実施される、消費者の期待に応えるための電力の小売全面自由化は第2段階にあたる。

 

さらに2020年4月1日から実施される第3段階では、送配電ネットワーク部門を中立化し、誰でも自由かつ公平・平等に送配電ネットワークを利用できるようにする送配電部門の法的分離を目指す。

 

東京オリンピック・パラリンピック開催年と同じ2020年に向け、発電・蓄電・節電といった一連のことが整備されていくことになるが、これらを支えるのに必要な仕組みが、電力網と情報網が機密に連携をとりながら処理を進めるスマートグリッドになる。

 

講演の中で村上憲郎氏は、電力の安定供給に向けて期待されることについて次のように話した。

 

「多様な発電、市場化により想定される電力供給の不安定性を除去すること。それに伴うことでは、昨年11月のエネルギーに関する官民対話に参加した際にも、小口発電量の託送料を別料金体系にするなど調整できないかとお願いしたが、その地産地消市場の対応も挙がる。
もうひとつは、デマンドレスポンスの実現とネガワット市場の創設だ。その大きな役割としては蓄電の促進である。瞬間電力量としてのkwと、家庭やビジネス、産業が使うエネルギーとしてのkwhの区別を心がけた制御も本格化してくるだろう。ネガワット市場については、これも昨年11月の官民対話の際にお願いして、2017年での創出をお約束いただいた。デマンドサイドによる安定供給体制となるデマンドレスポンスの完成形として、HEMS/BEMS/FEMSからデマンドサイドマネジメント(DSM)への進化も期待されている」

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IoTの“4つめ”のアプリケーションのヒントはビッグデータにある

 

電力システム改革の第3段階が実施される2020年の時点では、「現在電力網に接続しているモノ(電気機器)は、スマートグリッドに接続することになる」と村上氏は話す。

「スマートグリッドの情報網はインターネットだ。つまり、2020年に電気機器はインターネットに接続していることが当たり前の時代を迎える」(村上氏)。

 

スマートグリッド端末には、スマートハウス、スマートメーター、スマートアプライアンス(家電品)、さらにスマートビークルなど続々と生まれてくることになる。

 

それで実現されるものがモノのインターネットであるIoTで、2年後の2018年には全世界で80億台のIoTデバイスが登場するという予測があるほどで、この1、2年だけでも、さまざまな産業に大きな影響を与えてくることになる。

そうなってくると、必要となってくるIoTのアプリケーションは何か? 優先順位的には3つは判明しているという。

 

第1のアプリケーションは電力の見える化。つながっている電気機器などが、いまどのような消費電力を使っているかがリアルタイムに測定可能できることになる。第2のアプリケーションは、これから本格化してくるデマンドレスポンス。そして第3のアプリケーションが高齢者などの見守りサービス、ということだ。

 

「4つ目以降のアプリケーションは、まだわからない。ぜひ日本からアプリケーションが生まれてほしいと願うが、日中の時間帯で急上昇する電力需要曲線をいかに平坦に近づけるかということが切り口になるのではないか。2020年に需要曲線を平坦にする仕組みをしっかりと構築して、8月の暑い中に開催される東京オリンピック・パラリンピックで全世界に“スマートジャパン”をアピールできる。その結果として、発展途上国に対して電力システムインフラを輸出していくことで、国が目指すGDP600兆円の目標に貢献できるのではないか。そのヒントを一言で言うと、ビッグデータにあるだろう」

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「ビッグデータ 2.0」はディープラーニングによるブレークスルーが起こる

 

そのビッグデータだが、村上氏は3段階あるとする。
手元に蓄積されているデータを統計解析ソフトなどを用い分析するフェーズが「1」の段階。次が、IoTやSNSなどからも収集される大規模化したデータを並列処理で解析する「1.5」の段階。ここでは、大規模データの分散処理を支えるオープンソースのソフトウェアフレームワークであるHadoopの大規模分散処理技術が代表的だ。さらに先の「2.0」では、ディープラーニングにより第三次ブームを迎えている人工知能の援用を要請することになる、ということだ。

 

ビッグデータ1.5から2.0への進展は、属性分析(構文解析)から意味理解(意味解析)へと変化することを意味する。

 

「ビッグデータ1.5までは、ムラカミノリオは69歳、男性、職業何々、年収幾らといったリレーショナルデータベースに貯まっているデータを分析するものだが、ビッグデータ2.0では、ムラカミノリオは何をどう食べ、どういうものに“いいね!”を押しているか。行動履歴や生活パターンから人物像を解析する。いよいよ人工知能が必要になってくる。そうした実現が可能になってきた背景は、ディープラーニングでアルゴリズムにブレークスルーがあったことと、GPGPUや量子コンピュータといった、膨大なデータを支える潤沢なコンピューティングパワーが得られる時代が来たということだ」(村上氏)

 

IoTの2010年代は、インターネットの1990年代に匹敵すると言われる。巨大マーケットが誕生しようとしているわけだが、異なるのはスピードである。“通信の自由化は、ケータイ×インターネットにより30年で実施。電力の自由化は、バッテリー×IoTにより10年で実施”という。そう考えると、2020年は「まだ先」ではなく、「もう目の前」だ。

 

 

※本記事は、2016年1月27日~29日に東京ビッグサイトで開催されたENEX2016における電力自由化セミナー「電力システム改革が切り開くICTの新地平 ~IoT、ビッグデータ、人工知能~」の講演内容を参照した。

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