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VR原論〜人とテクノロジーの新しいリアル〜

服部桂、翔泳社

 メディア論などで知られる朝日新聞の服部桂が1991年に出版した『人工現実感の世界』(工業調査会)の再版。VR関連の最近動向のほか、廣瀬通孝(東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター長)と近藤義仁(エクシヴィ代表取締役社長、オキュラス・ジャパンチーム)との鼎談を追加しているが、ほぼ旧版そのままの内容である。豊富な写真と詳細なブロック図が効果的に使われており役立ち感がある。若きアイバン・サザランドやアラン・ケイ、ニコラス・ネグロポンテといった登場人物の当時の活躍ぶりも嬉しい。


 技術の中身に時代の流れを感じさせる面はあるものの、1991年時点のVRのアーキテクチャや設計思想にはさほど古さを感じさせない。言い換えれば、今も同じような箇所で技術者や開発者は悩んでいるとも言えそうだ。筆者が、今のVR/AR/MRブームに便乗して「VR元年」と最近称されることに違和感をもつものよく分かる。「少しは歴史を学んで、同じことを繰り返すなよ」ということだろう。ブレイン・マシン・インタフェースやハプティクスなどへの言及もあり、当時の技術レベルを知りことができる。巨人の肩の上に乗るうえで、本書は役に立ちそうだ。

 

 残念なのは、1991年に火がついたVRがいったん下火になった理由についての分析が物足りないところ。本書で取り上げられているVR企業の多くは、すでに姿を消している。なぜだろうか。同じ失敗を繰り返さないためにも、その理由を知りたいところだ。

書籍情報

VR原論〜人とテクノロジーの新しいリアル〜

服部桂、翔泳社、p.368、¥2376

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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