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事故の哲学〜ソーシャル・アクシデントと技術倫理〜

講談社選書メチエ、齊藤了文

 自動運転などAIが下した判断によって起こった事故の責任は誰にあるのか。ドライバーなのか、企業なのか、設計者なのか。複雑化した人工物(主に工学的に人間が作り出したもの)が関係する事故では、原因の解明に困難が伴い、加害者が特定できず、責任を問えないケースが考えられる。こうした状況に、企業、社会、法制度、技術者はどのように対応すべきか。最先端の領域だけに、読み終えた後には発展途上の議論といったモヤモヤ感が残るが、筆者は興味深い論点をうまく整理している。技術者として今後考えるべき問題を提起した本書はお薦めである。


 古くからある概念や倫理では現代社会に対応できない現状を、筆者は哲学的に考察する。社会と人工物、人間の関係性を再考し、人間観、社会制度、倫理観を問い直している。人工物がネットワークでつながり複雑系を形成し、原因も、責任も見えないソーシャルアクシデントは限りなく天災に近いというのが筆者の見立てである。科学技術は、社会システムによって補完されてはじめて社会の中で機能する。人工物の世界で安全・安心を確保するためには、制度や組織による補完が欠かせないと筆者は主張する。

書籍情報

事故の哲学〜ソーシャル・アクシデントと技術倫理〜

講談社選書メチエ、齊藤了文、p.240、¥1782

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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