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科学立国の危機〜失速する日本の研究力〜

豊田長康、東洋経済新報社

 三重大学学長や国立大学財務・経営センター理事長などを歴任した筆者が、日本の科学研究のレベル低下が著しく、危機的な状況にあることを多角的なデータを駆使して論考した書。筆者は、経済成長やイノベーション、生産性といった面で、日本が国際的に後れを取っていることに危機感を募らせる。500ページを超える大著だが、半分程度をグラフや表などのデータ類が埋めるので読み終えるのに時間はかからない。データ解説の間に現場の声を挿入しており、現場の実情も伝わってくる。警世の書としてお薦めである。


 筆者は、論文数(人口あたり)、大学や企業の研究資金、研究人件費、研究員数、論文の質(引用数)、博士課程の学生数、特許件数などのデータを取り上げて、大学や研究機関の研究教育力の低下を浮き彫りにする。研究教育力低下の原因となったのが、国立大学における「選択と集中」政策というのが筆者の見立てである。旧帝大を中心とする大規模な国立大学に対する補助を増やし、中小規模大学の予算を削った結果、悪化しつつあった研究力の低下をさらに加速させた。

 

 大規模な大学はイノベーションの「量」で大きな役割を果たしているが、「広がり」には中小規模大学の貢献が欠かせない。大規模大学と中規模大学は研究において持ちつ持たれつの関係があったものが、選択と集中によってこの循環が断ち切られたと分析する。政府からの大学研究費→研究人件費→研究従事数→論文数といった好循環が諸外国では機能しているが、日本では働かなかったとする。日本の公的研究機関の従業員数を現状の1.5〜2倍、資金にして6000億円から1兆2000億円増額しなければ、世界から置いていかれるというのが筆者の主張である。

書籍情報

科学立国の危機〜失速する日本の研究力〜

豊田長康、東洋経済新報社、p.536、¥2808

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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