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横田英史の読書コーナー

日本のものづくりを支えたファナックとインテルの戦略〜「工作機械産業」50年の革新史〜

柴田友厚、光文社新書

2019.3.20  10:01 am

 著者が「世界最強の裏方産業」と位置づける工作機械産業が成功した理由を、創成期におけるファナックと米インテルとのWin-Winの関係を交えながら論じた書。インテルに関する情報が文献(単行本)中心で迫力不足だが、出身母体のファナックに関する記述は詳しく工作機械産業史として読み応えがある。コンピュータ制御のCNC装置が本書の中核であり、組み込み業界の方にお薦めの1冊である。

 本書のポイントは、完成品に付加される「補完財」としてのCNC装置(NC装置)の価値に注目しているところ。CNC装置を付加することで工作機械の価値は高まる。工作機械は新興国の安値攻勢にさらされるが、CNC装置の強さは揺るがないとする。補完財の考え方を敷衍して、自動運転でIT系企業の攻勢にさらされている自動車産業が生き残るための方策にも言及している。

 ファナックをスピンアウトさせた富士通の経営判断と組織論に関する記述は、イノベーションのジレンマに陥らないための実践論として読め、なかなか興味深い。既存のハードワイヤードの工作機械事業と、新規事業であるマイクロプロセッサを使った工作機械事業は分離して別々の部門で展開しながら、経営トップが直轄して管理。潮時を見極めて早々に別会社として独立させる戦略はうまく機能し、ファナックの興隆につながったとする。

書籍情報

日本のものづくりを支えたファナックとインテルの戦略〜「工作機械産業」50年の革新史〜

柴田友厚、光文社新書、p.248、¥886

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。