経済学者たちの日米開戦 〜秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く〜

牧野邦昭、新潮選書

 陸軍が一級の経済学者たちを招集した研究集団・戦争経済研究班(通称、秋丸機関)。この秋丸機関が、「彼我の国力を考慮すると日米開戦は不可」と軍部に具申したにもかかわらず、なぜか日本は戦争に突入した。秋丸機関の報告書は無謀さを指摘したにもかかわらず陸軍はそれを無視して開戦、さらに国策に反するとしてすべて焼却されたというのが通説になっている。筆者は史料に基づく事実を一つずつ積み上げることで通説の間違いを指摘する。


 筆者は開戦に至った過程を、認知経済学や社会心理学の知見を取り入れて迫っている。集団意思決定の状態では個人よりも結論が極端になる。陸海軍を含む日本の指導者たちは先の見通しが立たず、むしろ開戦には慎重だったが、結局「確実な敗北」よりも「万一の僥倖」にかけて海戦したと分析する。

 

 ちなみに秋丸機関の報告書は、陸軍省軍務局の南進を支持し、参謀本部の北進を批判すると受け止められたという。その結果、日本がより悲惨な状況になったことが間違いない対英米ソ開戦を回避する役に立ったかもしれないと分析する。ワクワク・ドキドキ感は、読み応えのある経済書である。

書籍情報

経済学者たちの日米開戦〜秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く〜

牧野邦昭、新潮選書、p.272、¥1404

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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