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横田英史の読書コーナー

イオンを創った女〜評伝 小嶋千鶴子〜

東海友和、プレジデント社

2018.12.10  9:44 am

 イオングループの創業者で、イオングループ名誉会長の岡田卓也の実姉である小嶋千鶴子の評伝。小嶋は23歳でイオンの前身・岡田屋呉服店の社長に就任し、その後のジャスコ、イオンと発展する基礎を築いた。本書は生い立ちよりも、イオングループ社員に配布される小嶋の著者「あしあと」をベースにした経営哲学や人事哲学が中心の構成になっている。筆者は部下として薫陶を受けたコンサルタントなので、多少バイアスがかかるのは仕方がないだろう。

 経営書としては少々淡白な感じがする。小嶋の言葉を掲げ、その後に解説を加えるスタイルだが、コンテクスト(背景)について書き込み不足の感がある。小嶋の言葉自体は悪くないのだが、解説の深さが不足しており、さほど胸に響かない。ただコンパクトにまとまって読みやすいのは確かなので、松下幸之助の「道をひらく」のような読み方が適しているのかもしれない。

 本書は岡田卓也に比べて知られることの少ない小嶋に焦点を当てたところに価値がある。ジャスコ大学や美術館、池田満寿夫との関係など寡聞にしてしらなかった。流通業に関心のある方にお薦めの1冊である。

書籍情報

イオンを創った女〜評伝 小嶋千鶴子〜

東海友和、プレジデント社、p.217、¥1728

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。