10万個の子宮〜あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか〜

村中璃子、平凡社

 子宮頸がんを予防するワクチンが原因とされる副作用を問題視して、厚生労働省が定期接種開始からわずか2カ月後に摂取勧奨を見合わせた日本の状況を取り上げたノンフィクション。世界130カ国で使われ、WHOやCDCといった機関が安全宣言しているなかで、なぜ日本がワクチンの摂取が見合わせているのかを医者兼ジャーナリストの視点から解説する。必ずしも情報が十分ではない「子宮頸がんワクチン問題」について貴重な情報を提供してくれる書である。


 筆者は、科学的な根拠もなくワクチンの摂取を停止し、子もたちをがん罹患のリスクにさらす日本の行政と社会、メディア、医師の体質を厳しく批判する。著者が糾弾する日本社会の病巣は根深い。仮説に仮説を重ねて「新しい病気」を作る医者たち、それに対しておかしいと思いながら言いたいことが言えない医者の世界、情緒的で不正確な報道を繰り返すだけではなく、筆者から発表の場を奪ったメディアなどを槍玉に挙げる。

 

 ちなみに著者は、困難や敵意に遭いながらも公共の利益のためにサイエンスを広めた人物におくられる「ジョン・マドックス賞」(ネイチャー誌などが主催)を2017年11月に日本人で初めて受賞している。

書籍情報

10万個の子宮〜あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか〜

村中璃子、平凡社、p.272、¥1728

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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