DEEP THINKING ディープ・シンキング~人工知能の思考を読む~

ガルリ・カスパロフ、染田屋茂・ 訳、日経BP社

 米 IBM が開発したスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」に敗れたチェスの元世界チャンピオンが、2回にわたる対戦を克明に振り返った書。400ページを超える書で、中盤までは少々退屈だが、後半に入ると俄然面白くなる。チェス専用マシンの意外性あふれる指し手(不可解だが明らかな悪手)に心理的に揺さぶられる場面を活写するなど読み応え十分で読者を飽きさせない。コンピュータと人間のチェス対決を当事者が詳細に振り返った書として歴史的な価値がある1冊だ。

 

 筆者はディープ・ブルーの指し手について、「コンピュータにこんな手が指せるとは思っていなかっただろう」と言わんばかりだったと語る。実利を最優先する通常のコンピュータでは考えられない、人間の考え方に近い手筋だったと当時を振り返る。さらに、駆け引きを受け付けないはずのディープ・ブルーが自ら駆け引きする能力を備えていたことに驚きを隠さない。動揺した著者は、引き分けの局面で投了するミスをおかすハメになる。

 

 このほか重要な局面になると不自然にクラッシュするディープ・ブルーに、IBMの策謀と必死さを感じたことを明かすなど、興味深い話が満載である。本書を読んで意外に感じたのはカスパロフの IT リテラシー。想像以上に高く驚かされる。

書籍情報

DEEP THINKING ディープ・シンキング~人工知能の思考を読む~

ガルリ・カスパロフ、染田屋茂・ 訳、日経BP社、p.416、¥2160

 

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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