横田英史の読書コーナー
データ分析の力~因果関係に迫る思考法~
伊藤 公一朗 、光文社新書
2018.2.8 4:46 pm
因果関係の解明に焦点を当てたデータ分析の入門書。豊富な事例が理解を助けてくれる。数式を使わないのもいい。2017年に出版され、日経・図書文化賞をはじめ多くの賞をとっているのも頷ける。本書評で取り上げた「『原因と結果』の経済学」と併読するのが良さそうだ。データ分析に興味のある方にお薦めの良書である。
ビッグデータ分析の啓蒙書として評判の高い書だが、期待通りの出来で満足度は高い。学問的に一定のレベルを保ちながら、具体例を駆使した解説が秀抜である。MIT のネグロポンテ メディアラボ所長が主導した OLPC(One Laptop per Children)プロジェクトが、子供の成績に与える影響がほぼ皆無だった事実など、「へ~っ」と思わせる事例が少なくない。
シカゴ大学の助教授である筆者は、データとどう向き合うかの勘所や陥りやすいミスの数々を解説するとともに、データ分析を行うにあたって具体的にどのような考え方や技術が必要とされるかを丁寧に説く。数式的な理解ではなく、直感的な考え方の理解が重要と語る。最後にはデータ分析の不完全性や限界も明らかにしている。
書籍情報
データ分析の力~因果関係に迫る思考法~
伊藤 公一朗 、光文社新書、p.284、¥842
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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