強いAI・弱いAI~研究者に聞く人工知能の実像~

鳥海 不二夫、丸善出版

 東京大学大学院准教授の著者が、第一線の人工知能研究者8人と将棋棋士の羽生善治に行ったインタビューをまとめた書。人工知能学会の新旧会長のほか、松尾豊、中島秀之、山川宏などが著名な研究者が登場する。著者の質問は的を射ており、シンギュラリティの可能性や人工知能研究の展望、自動運転など、読者が聞きたいポイントを上手く突いている。文章も分かりやすく人工知能研究の最新状況を理解するのに役立つ。組み込み技術者の皆さんにお薦めである。

 

 タイトルになっている「強い AI」とは、意識や自我のようなものをもった人工知能を指す。例えばドラえもんで、現時点では存在しない。一方の「弱い AI」とは意識や自我はもっていないが、「知能があるかのように見える」振る舞いをする人工知能を指す。現在の人工知能が該当する。

 

 筆者の問題意識は、弱い AI の研究が進めば強い AI になるのか、強い AI はどのようにして実現するのか、強い AI は人間の脅威となるのか、シンギュラリティはあり得るのかなど。こうした観点から質問の数々を研究者に投げかける。

 

 研究者の見解は様々だが、人工知能学会の前会長 松原仁(はこだて未来大学教授)が、「アルファ碁に強い AI が宿っているではないか、ある種の直感力を持ったのではないか」という棋士の感想に対し、「自我をもたせる方法論は見えていないが、何らかの閾値を超えると自我らしいものが生まれるのではないか」といった見解を示しているのは興味深い。このほか、「人工知能が信頼を得るには“可読性”が不可欠」「ディープラーニングの先の大きなブレークスルーがないと、強い AI もシンギュラリティも来ない」「数学の発展が必要」「ディープラーニング一辺倒の日本の学会は多様性に欠けており問題」といった注目すべきコメントが、本書にはぎっしり詰まっている。

書籍情報

強いAI・弱いAI~研究者に聞く人工知能の実像~

鳥海 不二夫、丸善出版、p.256、¥1944

 

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役に就任。現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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