デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか

ライアン・エイヴェント、月谷 真紀、東洋経済新報社

 英エコノミスト誌のシニア・エディターが、デジタル技術によって変わりつつある社会と、それに対応して政治が採るべき措置を論じた書。どのように働けばいいのか、子どもの教育はどうすればいいのか、富の配分をどうすればいいのかについて考察する。タイトルと中身に少々がギャップがあるので要注意。デジタル技術によって生まれるネガティブな面だけを取り上げた書だと思うと期待はずれに終わる。エコノミストの記者らしくバランスのよく議論を展開している。

 

 本書のポイントは AI や 自動化、グローバリゼーションなどによって生まれる労働力需要の減少と低賃金、格差の拡大にどのように対処すべきかという点である。低賃金は持続的な経済成長を可能にする市場システムの土台をむしばむと強調する。著者は解決策として、最低賃金やベーシックインカム、教育制度などに焦点を当てる。ソーシャル・キャピタルの重要性についても強調する。

 

 貧困から抜け出せない新興国の状況についての指摘は興味深い。発展のあまりにも早い段階で脱工業化が起こり産業の空洞化が始まる。貧困から抜け出すための確実な切符だった工業を基盤とした発展の手法を危うくしていると述べる。

書籍情報

デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか

ライアン・エイヴェント、月谷 真紀、東洋経済新報社、p.362、¥1944

 

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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