CRISPR~究極の遺伝子編集技術の発見~

ジェニファー・ダウドナ、櫻井 祐子・訳、文藝春秋

 ワープロで文書を修正するように遺伝子を自在に編集できる技術「CRISPR(クリスパー)」の開発までの過程、適用事例、これから起こりうる社会・倫理的な問題などを、米カリフォルニア大バークレー校教授の開発者自らが綴った書である。一部に専門用語が登場し読みづらい面もあるが、読み飛ばしても本書の価値を損なうことはない。いま知っておくべき知識が詰まった良書で多くの方にお薦めできる。

 

 CRISPRは、ヒトゲノムを構成する32億文字の中から1文字の誤りを検出し修正できる技術で、ノーベル賞の候補に目されている。CRISPRの使い方の習得には高校生でも数日しかかからず、コストは従来の600分の1の2000ドルほど。まさに画期的である。

 

 本書の前半は CRISPR 開発物語だ。細菌がウィルス感染から身を守る免疫システムの解明から生まれたのが CRISPR である。筆者は図を使いながら分かりやすく説明する。本書を読むと基礎研究の大切さがよく分かる。

 

 後半では農作物や家畜の改良、遺伝病や HIV の治療といった応用面にページを割く。例えば腐らないトマトやウドンコ病の遺伝子を除去したパンコムギ、角の映えない牛などである。マンモスを蘇らせるプロジェクトさえも進行中である。

 

 病気の治療についても、ジストロフィーや先天性白内障の治療はマウスでの実験で成功済み。遺伝子に関係する病気に悩む多くの患者にとって朗報である。一方で生殖細胞の編集は、悪意をもって行えば人類の脅威となりうると筆者は警鐘を鳴らす。使い方を間違えれば、米国の諜報機関が指定したように「第6の大量破壊兵器」になりかねない。

書籍情報

CRISPR~究極の遺伝子編集技術の発見~

ジェニファー・ダウドナ、櫻井 祐子・訳、文藝春秋 、p.333、¥1728

 

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役に就任。現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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