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横田英史の読書コーナー

SHOE DOG(シュードッグ)

フィル・ナイト、大田黒 奉之・訳、東洋経済新報社

2017.12.1  10:47 am

 ナイキ創業者フィル・ナイトがつづったIPO(株式公開)までの波乱万丈の回顧録。本書からは筆者の行動力や熱意、経営哲学が伝わってくる。ナイキのブランディングや品質向上の歩みなども知りたいところだが、残念だがこの点では少々物足りない。日本企業との関わりも赤裸々に語っており興味深い。体系だった経営論ではないが、経営者の不屈の精神が伝わってくるお薦めのビジネス書である。

 本書は、筆者が自らの生き方を定めた1962年(24歳)から始まる。朝ジョギングをしながら、「勝ちたかった。いや、そうじゃない。とにかく負けたくなかったのだ。自分の人生もスポーツのようでありたい」と思ったという。そこで始めたのがスタンフォード大学時代に閃いた「日本のシューズを米国で売るという馬鹿げたアイディア」だ。このアイデアを実現するために何とか会社を立ち上げ、資金繰りに苦しみ、日本企業との係争に巻き込まれるなど悪戦苦闘しながら1980年のIPOにいたる過程を綴る。

 それにしても、ナイキがこれほどまで日本企業と縁の深い会社だったというのは知らなかった。筆者の夢の実現に最初に協力したのが現在のアシックス(当時のブランド名はオニツカタイガー)。創業者の鬼塚喜八郎との交流も本書には登場する。そしてナイキの飛躍を支えたのが日商岩井(今の双日)である。両社の担当者(実名で登場)に対する厳しい人物評も本書の特徴の一つである。

書籍情報

SHOE DOG(シュードッグ)

フィル・ナイト、大田黒 奉之・訳、東洋経済新報社、p.560、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。