世界からバナナがなくなるまえに~食糧危機に立ち向かう科学者たち~

ロブ・ダン、高橋洋・訳、青土社

 生産性と効率性を追い求めた結果、遺伝的な多様性が乏しくなっている穀物が置かれた危機的状況を明らかにしたノンフィクション。アイルランドのじゃがいも飢饉や繰り返される作物全滅の歴史を振り返りるとともに、現在主流となっている単一栽培の問題点、遺伝工学的アプローチによって病害虫に強い穀物を作り出す最新の研究などを紹介する。豊富な事例を用いた議論には説得力がある。残念なのは図が貧弱で見づらいところ。せっかくの良書なのにもったいない。

 

 興味深いのはヘンリー・フォードの農園経営の失敗だ。自動車工場と同じ発想でアマゾンでゴム農園を経営したものの、効率化を追い求めた結果、病害で全滅したというもの。今につながる農業の難しさがよく分かるエピソードである。

 

 病害虫に強い作物を作る品種改良も一筋縄ではいかない。病害虫がすぐに耐性を持ってしまう状況を筆者は「赤の女王との果てしないレース」と表現する。このレースに勝つために重要なのは野生種の根や種子を保存し、穀物の遺伝的多様性を確保しておくこと。筆者は、政治の波に翻弄された野生種コレクションの歴史や、コレクションした瞬間に野生種の進歩が止まってしまう難しさを明らかにする。

書籍情報

世界からバナナがなくなるまえに~食糧危機に立ち向かう科学者たち~

ロブ・ダン、高橋洋・訳、青土社、p.397、¥3024

 

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役に就任。現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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