知的機動力の本質~アメリカ海兵隊の組織論的研究~

野中 郁次郎 、中央公論新社

 ベストセラー「失敗の本質」で知られる野中郁次郎が、米国の海兵隊を組織論的に分析した書。進化し続ける組織としての海兵隊の実態はなかなか興味深い。筆者は第2次世界大戦時の米軍を「未来の環境に対して目標と構造を主体的に変えることができる組織」として評価し、海兵隊はさらに一歩進んだ組織と位置づける。ちなみに日本軍は「過去の成功体験に過剰適用し自己革新組織たり得なかった」とする。

 

 日本の組織に落とし込めるか疑問も感じるが、気づきの多い書なのは間違いない。

 

 筆者は「知的機動力」と呼ぶ概念を海兵隊をモデルにあてはめる。ここでいう知的機動力とはリーダーだけではなく組織の構成員一人ひとりが市場や技術などの環境変化を感じ取り、組織のビジョンやゴールに向かって組織が正しい方向に進んでいるかを判断しつつ、戦略や戦術をダイナミックに変えながら行動することを指す。ありとあらゆる知見を統合して、飛躍した仮説を作り、試行錯誤的に検証しながら新しい発見に至る組織の例が海兵隊だとする。

 

 海兵隊は、暗黙知を共有することで言葉を使わずに分かり合えることを重視するとともに、人間中心主義のデジタル化(ヒューマンセントリック・デジタリゼーション)にこだわっている組織だという見方も興味深い。

書籍情報

知的機動力の本質~アメリカ海兵隊の組織論的研究~

野中 郁次郎 、中央公論新社、p.289、¥1944

 

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役に就任。現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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