安倍内閣と黒田日銀の経済政策を徹底的に叩いた書。黒田=岩田日銀は、日本経済の主要な問題について首尾一貫して間違い続けている、欠陥理論によって現状分析と政策を歪めている、経済状況の判断ができず誤診を繰り返す中央銀行にまともな金融政策はできないと手厳しい。
なぜ今も経済の停滞が続くのか、本当に雇用は回復したのか、金融緩和でデフレからの脱却は成功したのか、格差は広がっているのかといった疑問に一つひとつ答え、アベノミクスのまやかしの実態を定量的なデータに基づき明らかにする。それにしてもアベノミクスを推進する責任者のモラル崩壊と三百代言ぶりは凄まじい。
筆者は、「低成長が続く日本経済」「雇用は増加していない」「デフレ脱却というう神話」「拡がる格差」「アベノミクスとポスト真実」と章を分けて解説する。ちなみに、数ある経済データの中でよいものを取り上げて、アベノミクスの成果だと宣伝する一方で、悪い経済状況はすべて異次元緩和とアベノミクス以外の外的要因に責任転嫁することを、筆者は「アベノミクスの経済理論」と命名している。実に辛辣である。
書籍情報
偽りの経済政策 ~格差と停滞のアベノミクス~
服部 茂幸、岩波新書、p.240、¥886