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横田英史の読書コーナー

「本をつくる」という仕事

稲泉連、筑摩書房

2017.5.31  10:53 am

 本好きの評者にとって至福の書である。紙の書籍や雑誌でもデジタル化の波が押し寄せているが、本書はアナログの極致というべき活版印刷、装丁、製本、フォント(書体)、紙、校閲といった技術の達人が登場する。実に味わい深い内容がてんこ盛りである。本のぬくもりが好きな方にお薦めしたい。

 冒頭では書体「秀英体」の大改刻を行った大日本印刷(フォント)を取り上げる。書体におけるプロプライエタリからオープンへの移行など興味深いエピソードを紹介する。新潮社の校閲の話も奥が深くて凄みがある。校閲にこれほど力を入れているとは寡聞にして知らなかった。書籍の品質を極限まで高める努力を怠らない、老舗出版社の底力を感じさせる内容である。

書籍情報

「本をつくる」という仕事

稲泉連、筑摩書房、p.235、¥1728

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。