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横田英史の読書コーナー

世界を変える「デザイン」の誕生~シリコンバレーと工業デザインの歴史~

バリー・M・カッツ、高増春代・訳、CCCメディアハウス

2017.4.30  6:45 pm

 デザインコンサルティング会社 IDEO 所属のデザイナが、デザインの視点でシリコンバレーの強さの源泉に迫った書。初めて知る話も多く面白く読める。“デザイン思考”がもてはやされるなか、一読に値する書である。

 産学の連携、情報機器のデザインの変遷、大学におけるデザイン教育の変化、デザイン会社の盛衰、デザイナのキャリア形成など、本書のカバー範囲は多岐にわたる。シリコンバレーには、デザインに関するエコシステムが多層構造をもって存在することが本書を読むとよく分かる。もっともかなり学術的な内容を含むので、 Apple 製品をはじめとするデザインの華々しい面を期待して本書を読むと落胆するかもしれない。

 筆者が、メーカーのなかで意外(?)に高い評価を与えているのがHP。ポケット関数電卓機「HP-35」に始まり、パソコンのデザインなど数多く取り上げる。このあたりの視点は興味深い。Apple I、Macintosh、iPhone、Kindle など有名な情報機器のほか、医療機器のデザインにページを割いているのも本書の特徴である。

書籍情報

世界を変える「デザイン」の誕生~シリコンバレーと工業デザインの歴史~

バリー・M・カッツ、高増春代・訳、CCCメディアハウス、p.356、¥2808

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。