イノベーションはなぜ途絶えたか~科学立国日本の危機~

山口栄一、ちくま新書

 NTT基礎研の半導体技術者だった著者がハイテクベンチャーの立ち上げに関係した経験をもとに、イノベーションと縁遠い日本の現状に警鐘を鳴らすとともに復活への処方箋を書いた新書。肩に力が入りすぎた記述もあるが、正鵠を射た指摘は傾聴に値する。本書を執筆した理由を筆者はこう語る。「イノベーションが途絶えた制度的な要因を解明するとともに、科学的発見からイノベーションが生まれるプロセスを明らかにし、科学立国日本の再興に向けた実践的な打開策を提示することにある」と。

 

 筆者は、米国は、大企業にはイノベーションを起こせないと判断し、SBIR(Small Business Innovation Research)と呼ぶハイテクベンチャー育成プログラムを立ち上げ成功を収めた。日本は米国を真似て日本版SBIR制度を始めたものの、根本思想を理解しなかった。結果として、上から目線の旧来型の中小企業支援策に堕したと指摘する。

 

 さらに日本の大企業は、米国がイノベーティブになった現象の本質を理解せず、無批判に受け入れて随従し、「株主価値」重視の名のもとに基礎研究から撤退する安直な「選択と集中」をしたと手厳しく批判する。

書籍情報

イノベーションはなぜ途絶えたか~科学立国日本の危機~

山口栄一、ちくま新書、p.228、¥864

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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