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横田英史の読書コーナー

レッドチーム思考:組織の中に「最後の反対者」を飼う

ミカ・ゼンコ、関美和・訳、文藝春秋

2016.11.4  2:27 pm

 組織には、トップに直言する「最後の反対者」が不可欠だと主張するビジネス書。マネジメントに携わる方にお薦めである。飛車が冒頭で紹介するのがローマカトリック教会が設けた「悪魔の代弁者」という役職。場当たり的に乱発されていた聖人認定を厳格化するためのもので、候補者が成したとされる徳や奇跡に疑いを投げかけ、徹底的な反対意見を述べる役割を担う。米国の軍や諜報機関における同様の組織が「レッドチーム」である。批判的な評価や分析を行い、軍事計画や作戦を探り、代替的な視点から敵の能力を分析するような独立した能力を統合軍に与える、訓練され、教育され練習を積んだ専門家からなる組織内グループと定義される。筆者は具体例も数多く挙げており理解を助けてくれる。

 筆者はレッドチームの役割、有効に機能させるための勘所などを解説する。レッドチームのテクニックを体系的に分類(六つのポイントから成る)し、実践者とその経験から活用例を調査し、レッドチームを使いこなすためにリーダーが知っておくべき実践的な指針を提供している。具体的には、あらゆるシナリオを想定するシミュレーション、仮想敵になりきる欠陥テスト、前提を疑う代替分析を通して、潜在的なライバルの関心や意図、能力をより深く理解するることを目的とする。直感に背くような取り組みによって、それまで気づかなかった政策立案者の思い込みを覆し、新鮮な視点で物事を考えことに役立つという。

書籍情報

レッドチーム思考:組織の中に「最後の反対者」を飼う

ミカ・ゼンコ、関美和・訳、文藝春秋、p.380、¥2052

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。