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横田英史の読書コーナー

IBMの思考とデザイン

山崎和彦、工藤晶、柴田英喜、丸善出版

2016.10.18  9:59 am

 ビジネスにデザインをどう生かすか、経営とデザインのつながりについて、トーマス・J・ワトソン・ジュニアから現在のジニー・ロメッティにいたるIBMの事例を通して解説した書。「問題を解決したり、新しい提案をするのに役立つ、誰にでも活用できるアプローチ」としてのデザインを取り上げる。最近になって脚光を浴びているイノベーションを生む方法論「デザイン思考」の原型ともいえる理論をIBMの担当者が論じる。キレイごとに過ぎる面もあるが、デザイン思考の興味を持ちの方に向く書である。

 ちなみに筆者によると、岐路に立つ経営者、チームにデザイン思考を取り入れたいマネージャー、仕事に役立つデザインの方法論を知りたい企画・開発担当者、時代の半歩先をとらえたいマーケッター、新しい製品・サービスを開発したいエンジニア、ビジネスにより一層貢献したいデザイナー、スタートアップや新規事業にかかわるパーソンが本書の対象という。

 IBMには、デザイン思考について四つの段階があったと述べる、第1段階はデザインプログラムの構築によって、企業ブランドを確立したトーマス・J・ワトソン・ジュニアの時代。「良いデザインは良いビジネスになる(Good design is good business)」として、デザインを重要な経営資源と位置づけた。第2段階はブランドの再生とユーザーセンタード・デザイン(人間中心デザイン)を導入したルイス・ガースナーの時代。人間中心のモノづくりを体系的に具現化した。

 第3段階はユーザーエクスペリエンスデザインを実践したのパルミサーノの時代。製品やサービスのデザインにとどまらず、ユーザーが体験することを統合的にデザインし、ユーザーが満足できる体験を達成することを目指した。第4段階は企業全体まで行き渡させる、ジニー・ロメッティによるデザイン改革である。

書籍情報

IBMの思考とデザイン

山崎和彦、工藤晶、柴田英喜、丸善出版、p.168、¥2592

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。