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横田英史の読書コーナー

《推薦!》住友銀行秘史

國重惇史、講談社

2016.10.14  10:12 am

 バブル期に起こった「イトマン事件」の処理で中心的な役割を果たした住友銀行の元取締役が、当時の手帳をもとに何が起こったのかを詳述した書。住友銀行とイトマンのやり取り、住友銀行内や政治家、官僚、マスコミの動きを時系列で詳細に紹介する。著者のエリート意識が鼻につく場面もあるが、非常に面白い内容が嫌味を凌駕している。著者を20年近く粘り強く説得した編集者は殊勲賞ものである。ノンフィクション好きに強くお薦めする。

 政治家、官僚、経営者、裏社会の住人など、バブル期ならではの関係者がほとんど実名で登場しており迫力満点である。へ~っと思う人物も顔を出す。登場人物は非常に多いが、冒頭に一覧があるので助かる。マスコミと著者との“持ちつ持たれつ”の関係も本書の読みどころの一つである。

 絵画取引や土地取引、ゴルフ場、株式、プライベートジェットなど、本書を読むとバブル期の匂いが漂ってくる。住友銀行の磯田一郎会長、巽外夫頭取、西川善文常務、イトマンの川村良彦社長と伊藤寿永光常務、さらには許永中など、登場人物には懐かしい名前が並ぶ。ちなみに筆者は住友銀行を辞めた後、楽天で副会長を務めている。イトマン事件で、大蔵省とマスコミに「内部告発状」を送った張本人でもある。

書籍情報

住友銀行秘史

國重惇史、講談社、p.474、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。