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横田英史の読書コーナー

花森安治伝~日本の暮しをかえた男~

津野海太郎、新潮文庫

2016.10.4  6:39 pm

 NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモチーフとなった雑誌「暮しの手帖」で、創刊編集長を務めた伝説の編集者・花森安治の評伝。幼少から高校や東京大学時代、デザイナとしての修行、戦中戦後、「とと姉ちゃん」こと大橋鎭子との出会い、100万部を超えるお化け雑誌「暮しの手帖」の誕生など、花森の足跡を丹念に追っている。

 テレビドラマ通り、才能豊かだが、ちょっと変わった人物だったことが本書を読むとよく分かる。有名な“女装”や戦争(軍隊)体験、大政翼賛会への参加など、深掘りした人物像に触れることもできる。暮しの手帖を一緒に立ち上げた大橋とのやりとりに関する記述は意外と少ないが、「暮しの手帖」ファンや伝説の編集者・花森安治の起源を知りたい方にお薦めの書である。

 評者が最も感銘をうけたのが、古き良き時代の雑誌の作り方である。ここまで心を込め、手間ひまをかける雑誌作りができた花森や大橋が実に羨ましい。時代が求めていたこともあるが、暮らしの手帖が100万部を超えたのも、むべなるかなである。自宅の火事が商品テストに及ぼした影響なども興味深い。

書籍情報

花森安治伝~日本の暮しをかえた男~

津野海太郎、新潮文庫、p.426、¥724

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。