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横田英史の読書コーナー

スクープ!~週刊文春エース記者の取材メモ~

中村竜太郎、文藝春秋

2016.10.2  6:36 pm

 このところスクープを連発する週刊文春。その週刊文春に20年在籍し現在はフリーであるジャーナリストが、取材の実際や週刊文春の編集プロセスを披露した書。同業者である評者から見ると物足りなさを感じるところもあるが、知られざる情報を提供してくれているのも間違いない。週刊文春ファンやジャーナリストの活動を知りたい方にお薦めできる。

 筆者の書きぶりは慎重である。幾重にも予防線を張りながら、嘘ではない事実を開陳している。結局、スクープを連発する取材の極意については「肝心のところが分からない」のだが、人とのつながりや粘り強さの重要性は伝わってくる。取材法はトップシークレットなので仕方がないところだろう。記事の裏側にある地道な取材活動を垣間見ることができるだけでも意味がある。

 本書で最も多くのページを割いているのが、CHAGE and ASKAの「ASKAの薬物問題」である。肝になる情報ルートは隠しているが、経緯を細かく明らかにする。このほか高倉健が亡くなったあとに発覚した養女の存在、社会問題化したNHK紅白プロデューサーの横領事件やルーシー・ブラックマン失踪事件、意外なところでは宇多田ヒカルへの取材などを取り上げている。

書籍情報

スクープ!~週刊文春エース記者の取材メモ~

中村竜太郎、文藝春秋、¥1296、p.222

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。