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横田英史の読書コーナー

学力・心理・家庭環境の経済分析~全国小中学生の追跡調査から見えてきたもの~

赤林英夫、直井道生、敷島千鶴、有斐閣

2016.9.24  2:20 pm

 小学生と中学生の学力や問題行動が、親の収入や学歴といった家庭環境、出生時の健康などにどのような影響を受けるかを、親子の4年分の追跡データ「日本子どもパネル調査(JCPS)」で定量的に分析した学術書。意外な結果も出ており、興味深く読める。数字で裏付けられているので納得性も高い。調査分析の手法について多くのページを割いているが読み飛ばしても問題ない。米国についての分析もあるので、格差問題などに興味のある方に向く書。ただし学術書とあって、値段はそこそこ高い。

 子どもの学力格差は、子どもの発達に連れて拡大する。子どもの学力は低所得家庭では低いままに、高所得家族では高いままに固定されやすい。ただし、親の経済力と子ども学力の間に正の相関関係は確認できなかったという。子どもの問題行動については、小学校高学年よりも低学年の方が解消される可能性が高い。解消には、親の経済状態以上に親の教育水準がカギを握る。またQOL(生活の質)については、親の経済状態と教育水準の改善が同等に重要になるという。親の学校参加と子供の学力の関係などでも興味深い結果が出ている。

書籍情報

学力・心理・家庭環境の経済分析~全国小中学生の追跡調査から見えてきたもの~

赤林英夫、直井道生、敷島千鶴、有斐閣、p.274、¥3348

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。