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横田英史の読書コーナー

1493~世界を変えた大陸間の交換~

チャールズ・C. マン、Charles C. Mann、布施由紀子・訳、紀伊國屋書店

2016.7.7  10:16 am

 銀、病原菌(マラリア、ジャガイモ疫病など)、タバコ、じゃがいも、ミミズ、ゴムノキ、人間(奴隷)を軸に、膨大な文献と取材を駆使しながら世界の交流史をイキイキと描いたノンフィクション。筆者は、例えばミミズがタバコと引き換えに、イングランドから新大陸に上陸した経緯がさも見たきたかのように描く。米国ジャーナリズムの奥深さを感じさせる良書である。歴史に関心のある方に強くお薦めしたい。

 本書を読むと、現在の社会が、筆者が“コロンブス交換”と呼ぶ生物や文化の交換過程を経て生まれたことがよく分かる。無味乾燥な歴史書は一線を画しているのは確かだ。800ページを超える大著なので持ち運びに難があるが、興味深く濃い内容につい引き込まれて読み進むことができる。

 ちなみにタイトルの「1493」は、1492年に新大陸を発見したコロンブスがスペインに帰国した年である。この年を境に世界は大きく変わり、グローバル化が始まったと著者は位置づける。コロンブスの新大陸発見以前を扱った前著『1491~先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見』(NHK出版)が絶版(Amazonでは古書が高値で売買されている)なのは残念である。電子書籍でも構わないので復刻を期待したい。

書籍情報

1493~世界を変えた大陸間の交換~

チャールズ・C. マン、Charles C. Mann、布施由紀子・訳、紀伊國屋書店、p.811、¥3888

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。