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横田英史の読書コーナー

記憶のしくみ(上)

エリック・R・カンデル著、ラリー・R・スクワイア著、小西史朗・監修、桐野豊・監修、ブルーバックス

2014.4.9  12:00 am

 「記憶するとはどういうことなのか」について、ノーベル賞生理学・医学賞受賞者らが過去の研究成果と最新の知見に基づき解説した書。記憶はどこに、どのようにして保存されるのか、記憶の保存に特化した分子は存在するのか、記憶はどのようにして安定化されるのかといった疑問に答える。豊富な図版を駆使して、記憶の種類、記憶を司る分子、学習とシナプス可塑性など、記憶の仕組みを分かりやすく解説している。脳や記憶に興味をもつ方にお薦めの1冊である。
 筆者によると、分子的生物学的なアプローチが、システム神経科学や認知心理学と結びついて記憶の解明は進んでいる。神経回路内で神経細胞同士がどのように働くのか、学習プロセスと記憶のシステムはどのように組織化され、それらが相互にどう作動するかが明らかになりつつある。学習に関する研究では、神経細胞同士の結合が学習中にどのように変化するか、その変化が時間とともに記憶としてどのように維持されるのかを説明できるようになっているという。
 我々は特定のことを忘れるが、この忘却によって、抽象化したり、主要な点だけを覚えることができる。詳細を忘れることができるおかげで、異なる種類の経験から教訓を加えていって、概念を形成したり徐々に知識を吸収することができるようになる。ある程度の物忘れは、記憶を正常に機能させるために重要かつ必要な一部だという。なんとも魅力的な話の数々である。

書籍情報

記憶のしくみ(上)
エリック・R・カンデル著、ラリー・R・スクワイア著、小西史朗・監修、桐野豊・監修、ブルーバックス、p.304、¥1,728

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。