横田英史の読書コーナー
記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞
門田隆将著、角川書店
2014.3.28 12:00 am
いま旬のノンフィクション作家・門田隆将が東日本大震災の折に起こった人間ドラマを描いた書。地元の人間を助ける代わりに津波にさらわれて亡くなった福島民友新聞の熊田記者を核に、3.11の際に地元記者たちがとった行動を克明に追う。津波が迫るなかで身の危険を顧みず写真撮影する記者の姿、取材中に地元の人を助けられなかった記者の悔恨、震災翌日に宅配しただけではなく避難所にも新聞を配った販売店の奮闘などを紹介する。あのとき何が起こったかを知るうえで貴重な情報を提供してくれる1冊である。
もう一つの見所は、休刊の危機に瀕した福島民友新聞の執念だ。福島民友新聞は、震災による停電、非常用発電機のトラブルなどに見舞われ、100年以上の歴史で初めて新聞を出せない状況に直面する。創刊以来の通算号数を表す「紙齢(しれい)」が3万8340で途絶えかなねい。この状況から、どのような手を打って脱したのか。同業者として興味深い情報が満載である。
書籍情報
記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞
門田隆将著、角川書店、p.339、¥1,680
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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