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横田英史の読書コーナー

しんがりしんがり~山一證券 最後の12人~

清武英利、講談社

2014.2.27  12:00 am

 2600億円の債務を隠蔽し続けたあげく、1997年に自主廃業した山一證券。当時の社長が記者会見で号泣した場面を記憶している方も多いだろう。本書は、破綻後も会社に残り、その原因究明と清算業務を行う“殿(しんがり)戦”を務めた12人にスポットライトを当たノンフィクションである。元凶だった人物を含め幹部の多くを実名で取り上げている。迫力満点で読み応えがある。会社とは何か、社会人とは何か、人間の生き様とは何かを感じさせる良書。ベストセラーで長く上位にランキングされているのも納得できる。
 筆者は読売新聞の社会部で敏腕記者と呼ばれ、後に読売巨人の球団代表に就任したものの渡邉恒雄を告発して球団を追われた清武英利。本書では約17年前に起きた出来事を丹念な取材で活写しており、長めのノンフィクションだが一気に読ませる。ブランクを感じさせない出来である。
 本書には大きく二つの見どころがある。一つは企業が倒産したときの人間模様。殿戦という損な役回りを引き受けた12人のメンバーの揺れ動く心情を描くとともに、早々に逃げ出した役員たちの保身と責任転嫁、沈黙、大蔵省の責任にもページを割く。もう一つは、2600億円という債務が生まれた経緯である。関連会社や海外支店を使った飛ばしの実態と、巨額の債務が生まれた原因を明らかにする。

書籍情報

しんがりしんがり~山一證券 最後の12人~
清武英利、講談社、p.362、¥1,890

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。