Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

メルトダウン 連鎖の真相

NHKスペシャル『メルトダウン』取材班、講談社

2014.1.13  12:00 am

 400人を超える関係者への取材をもとに、福島第一原発事故の真相に迫るノンフィクション。掛け値なしに素晴らしい本である。NHKスペシャルの取材班が書き下ろしたもので、2011年12月から2013年3月に放送した3本の番組がベースになっている。福島原発であのときに何が起こったを知る上で貴重な情報が数多く含まれており、多くの方にぜひ読んでもらいたい。B5判と大型の本のうえに重いので持ち運びに難があるが、迫力のある写真や詳細な図を掲載するには、これくらいのサイズが必要だろう。我慢しても読むだけの価値はある。
 本書の特徴の一つは、福島原発事故の経過を時間軸にそって、現場関係者・東電社員の証言を交えながら克明に追っているところにある。三つの原子炉がほぼ同時にメルトダウンを起こし、しかも“想定外”の事態が次々に起こる現場を活写する。とにかく迫真の度合いが半端ではない。もう一つの特徴は、迫力満点の写真と技術的な詳細を分かりやすく解説した図の数々である。いずれも効果的に使われており、紙の書籍の良さを満喫できる。

書籍情報

メルトダウン 連鎖の真相
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班、講談社、p.296,¥1,955

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。