横田英史の読書コーナー
発明家に学ぶ発想戦略~イノベーションを導くひらめきとブレークスルー~
エヴァン・I・シュワルツ、桃井緑美子・訳、翔泳社
2014.1.8 12:00 am
この書評で2010年に取り上げた「Juice: The Creative Fuel That Drives World-Class Inventors」の日本語訳。日本語版はかつて、「発明家たちの思考回路」(2006年)と題されてランダムハウス講談社から出版されたものの絶版状態になっていた。復刻されたので改めて読んでみた。発明とは一連の発想戦略をツールとして生まれるもので、料理や演技、セーリングなどのスキルと同じように、教え、学び、実行できると筆者は強調する。本書は発明について示唆に富む内容を含んでおり、お薦めの1冊である。
筆者は発明家に共通する11の特徴を挙げる。可能性を創出する、問題をつきとめる、パターンを認識する、チャンスを引き寄せる、境界を横断する、障害を見極める、アナロジーを応用する、完成図を視覚化する、失敗を糧にする、アイデアを積み重ねる、システムとして考える、である。
本書は、11の要因にそれぞれ1章を充て、発明家と言われる人が、どういった思考プロセスを経て発明に至ったか、どんな経験(失敗)をしてきたのか、学問的なバックグラウンドはどうなのかなどを紹介する。エジソンやベル、ニコ・テスラ、ライト兄弟、グッドイヤー(この逸話は面白い)といった過去の偉人のほか、Holonyak(LEDの発明者)、Kamen(セグェイの発明者)、Katz(コールセンター・システムの発明者) など存命している発明家もカバーする。もちろん本書を読んですぐに発明家になれる訳ではないが、示唆に富む指摘が多い。実生活でも役立ちそうである。
書籍情報
発明家に学ぶ発想戦略~イノベーションを導くひらめきとブレークスルー~
エヴァン・I・シュワルツ、桃井緑美子・訳、翔泳社、p.312、¥2,100
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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