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横田英史の読書コーナー

狼の牙を折れ:史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部

門田隆将、小学館

2013.12.9  12:00 am

 公安警察が、三菱重工ビル爆破など連続企業爆破事件の犯人たちを、どうやって追い詰めていったのかを克明に追った書。公安警察の捜査員が実名で登場するなど、臨場感にあふれている。捜査員や新聞記者、カメラマン、妻を小包爆弾で亡くした土田國保警視総監の人間模様も詳細に書き込んでいる。企業連続爆破事件が起こったのは30年ほど前なのでご存じない方も多いかもしれないが、一級のノンフィクションとしてお薦めである。当時をご存じの方にとっても、知られざる内容がてんこ盛りなので十分楽しめる。
 三菱重工ビル爆破事件が起こったのは1974年(昭和49年)7月。その後も三井物産、帝人、大成建設、鹿島建設、間組などが狙われた。今では考えられないほど騒然とした時代だった。犯行声明を出したのは、公安が把握していない、東アジア反日武装戦線“狼”、東アジア反日武装戦線“大地の牙”、東アジア反日武装戦線“さそり”という正体不明の過激派だ。彼らを爆弾教本「腹腹時計」と犯行声明を詳細に分析して突き止める。筆者が書き込んだ、捜査における数々の失敗と幸運が本書に奥行きを与えている。

書籍情報

狼の牙を折れ:史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部
門田隆将、小学館、¥1,785

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。