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横田英史の読書コーナー

~果てしない孤独~独身・無職者のリアル

藤原宏美、関水徹平、扶桑社新書

2013.11.22  12:00 am

 スネップ(SNEP:Solitary Non-Employed Persons)と呼ばれる独身・無職者の置かれた現状を解説した書。スネップとは、20~59歳の結婚したことがなく、学生でもなく、家族以外との人付き合いがない孤立状態にある無業者を指す。その人口は現時点で約160万人だが、今後さらに増加する可能性が高い。なんとも生きにくくなっている時代を本書はインタビューを中心に明らかにする。書き込み不足を感じる部分があるが、日本社会の現状を知ることのできる新書である。
 ちなみに同様の用語にニート(NEET:Not in Education,Employment or Training, NEET)がある。ニートは就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない15~34歳の若年無業者を指しており、社会的に孤立しているスネップの方が深刻度は大きい。
 筆者は、日本社会が育んできた「学校・企業・家族の三位一体」が崩れたことにスネップの原因を見る。崩れたのは安定した雇用。非正規雇用の増加につながり、未婚率を高めた。すなわち企業社会の崩壊が学校、家族に波及し、孤立無援のスネップを生み出したと筆者は分析する。

書籍情報

~果てしない孤独~独身・無職者のリアル
藤原宏美、関水徹平、扶桑社新書、p.179、¥798

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。