横田英史の読書コーナー
病の皇帝「がん」に挑む~人類4000年の苦闘~ 上
シッダールタ・ムカジー、田中文・訳、早川書房
2013.11.14 12:00 am
現役の腫瘍内科医/ガン研究者が、ガンとは何か、人類はガンとどう戦ってきたかを綴ったノンフィクション。文句なく面白い。ガンの起源にさかのぼり、歴史を通してガンという病気がどのように変化してきたかを描く。筆者は本書を「ガンの伝記」と呼んでいる。ガン研究者や医者の人間臭さが書き込まれており、フィクションのような面白さがある。
上下2巻の大著なので引いてしまうかもしれないが、多くの方にお薦めしたい良書である。ピュリッツァー賞やガーディアン賞を受賞したのもうなづける。翻訳も悪くないので、分量が気にならないくらいスイスイ読める。上巻の最後に筆者に対するインタビューを収録していることも理解を助けてくれる。
上巻は小児がん(白血病)と乳がんを中心に、外科治療、X線治療、化学療法の歴史を、ガンと戦いに試行錯誤を続けた研究者たちを活写する。特に、抗癌作用をもつ物質・葉酸類似体を偶然発見し、普遍的な治療法への道を拓いたシドニー・ファーバーには多くのページを割いている。上巻の終盤では、終末医療(ホスピス)やガン予防にも言及する。がん予防の章で描く、タバコ業界との攻防はスリリングで、読み手を飽きさせない。
書籍情報
病の皇帝「がん」に挑む~人類4000年の苦闘~ 上
シッダールタ・ムカジー、田中文・訳、早川書房、p.418、¥2,205
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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