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横田英史の読書コーナー

脳と機械をつないでみたら~BMIから見えてきた~

櫻井芳雄、岩波現代全書

2013.11.6  12:00 am

 動物が思い通りに機械を動かすことができる仕組み「BMI(Brain-Machine Interface)」について、最新の研究成果や知見を紹介した入門書。BMIの研究が現時点でどこまで進んでおり、どういった治験を神経科学にもたらしているのか、BMI研究がぶつかっている壁とは何か、今後の展望、社会にどのような影響を与えているかなど、広範な話題を扱う。著者は「BMIは21世紀の月面着陸である」という研究者のコメントを引用しているが、本書を読むとナルホドと得心がいく。図やイラストを多用し分かりやすく解説しており、BMIや神経科学に興味をもっている方はもちろん、そうでない方が読まれても損はない1冊である。
 興味深いのは、BMIが脳の活性化に一役買っているところ。筆者は、「まるで自分の身体を動かすように、思った通りに機械が動く」のが真のBMIだと定義する。このためには動物(ヒトやラット、サルなど)側の学習が不可欠となる。BMIにつながった脳は、機械がうまく動くように学習を繰り返し、操作に習熟していく。この学習がニューロンの新生を促し、電極の周辺に新しい神経回路を作り出す。この神経回路が活動することでBMIの習熟がさらに進むといったループを描いて、思い通りに機械が動く状態に近づいていく。クモ膜下出血や脳梗塞などのリハビルに活かせそうである。

書籍情報

脳と機械をつないでみたら~BMIから見えてきた~
櫻井芳雄、岩波現代全書、p.224、¥1,995

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。