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横田英史の読書コーナー

岐路に立つ精神医学~精神疾患解明へのロードマップ~

加藤忠史、勁草書房

2013.10.25  12:00 am

 精神医学の置かれた現状を分析し、あるべき姿を提案した書。この書評で以前紹介した「クレイジー・ライク・アメリカ:心の病はいかに輸出されたか」と共通している部分もあるが、精神疾患についてより広範に扱っており提言色が濃くなっている。「新型うつ病」など、精神疾患への関心が高まっているなか、精神医学の歴史と現状、今後をざっと知ることのできる良書である。後半部分が駆け足になっている感があるのは少し残念だが、多くの方にお薦めしたい。
 著者はまえがきで、精神疾患に現在用いられている治療法は50年ほど前から画期的な進歩がないと語る。国際的診断基準や治療アルゴリズムが作られたものの、それが画一的な治療と批判されるとともに、「とりあえず抗うつ薬」と揶揄される現状を生んだと嘆く。脳科学が進歩した現在でも、診断法といえば、面接をして、症状を話し、病歴を聞くといった方法しかない。精神疾患に特化した検査法が存在しない。本書では、精神疾患の原因を解明して、生物学的な診断法を確立し、その原因を直接治すような、根本的な治療法を開発することが必要であり、そのために何をすべきかについて持論を展開している。

書籍情報

岐路に立つ精神医学~精神疾患解明へのロードマップ~
加藤忠史、勁草書房、p.222、¥2,730

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。