Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

CIA極秘マニュアル~日本人だけが知らないスパイの技術~

H・キース・メルトン、ロバート・ウォレス、北川玲・訳、創元社

2013.10.9  12:00 am

 タイトルにつられて、スパイ教本だと思って買うと後悔するかもしれない。007に登場するようなスパイの技術や仕掛けといたった話題はほとんど登場しない。本書のメインは、マジシャンの技術を応用した“騙しのテクニック”である。これ自体はCIAの活動の一端が分かり興味深いが、さすがに全体の3分の2を占めと延々と続くので最後は飽きてしまう。認識不能バイオ銃や歯磨きチューブに隠した単発銃、毒入りペンといった話もあるので、スパイ活動に興味のある方がざっと目を通すのに向く書である。
 本書の背景には1950年代における共産主義台頭の脅威がある。アイゼンハワー大統領の時代には「平和な時代には認可されないような防衛的かつ攻撃的な諜報活動」が求められた。こうした考えのもとに、「MKウルトラ」と呼ぶ149の冷戦対応プログラムが策定された。KGBによる活動から米国民や友好国の国民を守るための対抗策が中心だったが、このなかに当時有名だったマジシャンの技術をスパイ活動に役立てるプログラムが含まれていた。MKウルトラのマニュアルのなかで破棄を免れたのが本書である。
 本書の紹介するマジシャンの技術は、ステージマネジメントや手さばき、変装、替え玉(アイデンティティ・トランスファー)、脱出術、錠剤・液体・粉末をこっそり飲ませる方法、モノを隠せる小道具の数々である。とりわけ小道具の数々の紹介は挿絵付きで楽しく読める。

書籍情報

CIA極秘マニュアル~日本人だけが知らないスパイの技術~
H・キース・メルトン、ロバート・ウォレス、北川玲・訳、創元社、p.224、¥1,470

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。