横田英史の読書コーナー
スポーツ・インテリジェンス~オリンピックの勝敗は情報戦で決まる~
和久貴洋、NHK出版新書
2013.9.26 12:00 am
オリンピックでの競争力向上やメダル獲得の裏舞台を、情報戦の側面から明らかにした書。戦略性に疑問が投げかけられること多い日本だが、スポーツに関しては意外にちゃんとやっていることが分かる。金メダリストを生む具体的なプロセスなど、知られざる話が多く楽しめる新書である。スポーツ好きの方にぜひお薦めしたい。ちなみに日本にスポーツ・インテリジェンスの専門組織ができたのは2001年のこと。国立スポーツ科学センターに情報戦略部門が設置されたのが最初で、現在は日本スポーツ振興センターの情報・国際部に引き継がれている。
国家の諜報(インテリジェンス)と同じで、スポーツ・インテリジェンスの大半は公開情報に基いている。外国人選手やチーム、器具を徹底的に調べあげる。最近は選手のブログの分析までも行うという。例えば何気ないオーストラリア選手のブログから、チームビルディングのノウハウを突き止めるあたりの記述は興味深い。
スポーツ・インテリジェンスの先進国はオーストラリアとイギリスである。オーストラリアは2000年のシドニーオリンピックに向けて、戦略的にトップアスリートの発掘と育成を行った。そのなかにはトレーニングと医学・科学のサポート体制の整備が含まれる。これらは「オーストラリアモデル」として世界中に広まった。そのオーストラリアの勢いが落ちている中で台頭めざましいのが、2012年にロンドン・オリンピックを開催したイギリスという。
書籍情報
スポーツ・インテリジェンス~オリンピックの勝敗は情報戦で決まる~
和久貴洋、NHK出版新書、p.200、¥777
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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