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横田英史の読書コーナー

アップル帝国の正体

後藤直義、森川潤、文藝春秋

2013.9.5  12:00 am

 類書と異なる切り口で米Appleのビジネスに迫った書。Appleといえば、報道管制が厳しい秘密主義の企業として有名である。米国のジャーナリストさえAppleに直接アクセスするのが難しい状況にあって、日本人の著作には自ずと限界があり、期待ハズレの書が少なくなかった。本書は週刊ダイヤモンド記者という立場を逆に利用し、日本の部品メーカーや家電量販店、レコード会社、家電メーカー(特にソニー)、通信キャリアを丹念に取材することで、Appleビジネスの実情を明らかにする。Appleの経済圏に飲み込まれた日本企業の実情を炙りだしており興味深い。
 iPhone5やPhone5S/5Cの状況を見るとピークを打った感があり出版のタイミングを逸した気がするが、本書が一時代を築いたAppleの動きを知る上で役立つ情報を盛り込んでいるのも確か。身近で身につまされる話も多く、EISの読者の皆さんにお薦めの書である。  本書はAppleからの発注が止まったシャープの亀山工場の話で始まる。シャープとAppleとの関係を歴史を踏まえながら紹介する。Appleとビジネスをすることが部品メーカーにとってどのような意味を持つのか、Appleは下請けメーカーにどのような態度をとるのかを現場担当者への取材をもとに掘り下げている。知られざるエピソードも多く、読み応え十分である。
 このほか倒産に追い込まれた小型モーター・メーカーの話、iPodのステンレスケースを磨いて一躍有名になった業者の話など、興味深いエピソードがてんこ盛りである。下請けメーカーの原価を丸裸にする購買部門の力量、1~2カ月先の生産予定を1日単位で立てるサプライチェーンの威力などAppleの凄さを感じさせる話が多い。

書籍情報

アップル帝国の正体
後藤直義、森川潤、文藝春秋、p.212、¥1,365

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。