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横田英史の読書コーナー

反省させると犯罪者になります

岡本茂樹、新潮新書

2013.6.28  12:00 am

 悪いことをした人間を“反省”させても更生にはつながらないことを力説した書。筆者は立命館大学教授として教壇に立つとともに、刑務所で累犯受刑者の更生支援にも携わっている。刑務所や教育現場での体験に基づき、「犯罪者に反省させるな」「子どもに反省文を書かせるな」と訴える。興味深い事例がてんこ盛りである。タイトルも秀抜である。内容を的確に表すとともに、読者の関心をぐっと引き寄せる力をもっている。「我が子と自分を犯罪者にしないために」と題した章も用意しており、子育てにも生かせる。多くの方にお薦めの1冊である。
 筆者は、問題行動が起きたとき、厳しく反省させればさせるほど、その人は後々大きな問題を引き起こす可能性が高まると強調する。反省するのは表面上だけで、世間向けに体裁を整える偽善が身についてしまう。あるいは反省文ばかりが上手になってしまい、心からの反省につながらない。犯罪者に対して筆者は、被害者や裁判、家族に対して不満があるのなら、まずその不満を語らせる。不満を語るなかで、なぜ犯罪を犯さなければならなかったのか、自分自身にどういった内面の問題があるのかが少しずつ見えてくるという。そこが更生の出発点だと強調する。

書籍情報

反省させると犯罪者になります
岡本茂樹、新潮新書、p.220、¥756

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。