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横田英史の読書コーナー

「空気」の構造: 日本人はなぜ決められないのか

池田信夫、白水社

2013.6.24  12:00 am

 日本人の意思決定の構造を、山本七平の「空気の研究」や丸山眞男の言説にもとづいて論じた書。日本の企業や政治の「決められない」「変革できない」症候群の根本原因を探っている。名著「失敗の本質」を現代に当てはめて解説している感がある。精神主義が跋扈し兵站を無視した日本軍の犯した失敗を繰り返している日本の姿を浮き彫りにしている。事例は満州事変から福島原発事故までと広範だが、著者のブログ同様に切り口が鮮明で読みやすい。一読をお薦めする。
 筆者は、毎年のように首相が代わり、歳出が際限なく膨張する日本の政治と、グローバル資本主義のなかで大胆な事業再構築ができない日本企業とのあいだに共通の欠陥を見る。具体的には、責任の所在が曖昧で中枢機能が弱い。そのため利害の対立する問題を先送しがちになる。現場が強く部分最適に陥り、放置すると破綻が目に見えているのに変えられない。全体最適の視点がスッポリ抜け落ちる。本書はこうした状況を、これまでに書かれた「日本人論」から探る。

書籍情報

「空気」の構造: 日本人はなぜ決められないのか
池田信夫、白水社、p.240、¥1,680

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。