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横田英史の読書コーナー

Lean In: Women, Work, and the Will to Lead

Sheryl Sandberg、W H Allen

2013.5.12  12:00 am

 このところ日本のメディアでさかんに取り上げられている、米Facebook COOのシェリー・サンドバーグの書。女性の社会進出の難しさ、ガラスの天井、仕事と家庭の両立問題を、自らの体験やIT業界の著名人のコメント、各種の調査を駆使して論じている。世界銀行やMcKinsey 、Googleといったエリート街道を歩いているサンドバーグだけあって、説得力のある論理展開はさすがである。本書は出版以来、米国でトップ・セラーになっているだけではなく、賛否両論を巻き起こし社会的現象になっている。万人向けではなく、けっして面白い本ではないが、女性の上司・同僚・部下をお持ちの方が読んで損はない。英語は平易で読みやすい。日本語版が出ていないのは不思議だが、これだけ話題を呼んでいるので、そのうちに出るのだろう。
 タイトルの“Lean In”は「一歩踏み出す」の意味である。サンドバーグは、世間の目を気にして社会進出や出世に消極的で尻込みしている女性の背中を押し、一歩踏み出すことを促している。年俸3000万ドル(30億円)のサンドバーグの主張は、一般的な女性には当てはまらないとの批判が多いが、超エリートで超リッチという面を考慮しても傾聴すべき指摘が少なくない。米国は女性の進出が進んでいるというイメージだが、現実はかなり異なることが本書を読むとよく分かる(それでも日本よりも数段進んでいる)。子育ての問題、企業における微妙な立場、女性同士の問題など、日米で共通する課題は驚くほど多い。
 サンドバーグは、人生訓やビジネス体験、本書を上梓する決断をするまでの過程を率直に披露している。女性から「メンターになってくれ」と頻繁に言われる話や、キャリア形成は階段を上り下りではなくジャングルジムという人生観、パーフェクトではなくベターを目指すモットーなど、興味深い話が盛りだくさんである。夫の話もしきりに出てくる。夫ができた人間なのも、本書が批判にさらされる一因かもしれない。

書籍情報

Lean In: Women, Work, and the Will to Lead
Sheryl Sandberg、W H Allen、p.256、¥1,990(ペーパーバック版)/¥1,377(Kindle版)

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。