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横田英史の読書コーナー

エリア51~世界でもっとも有名な秘密基地の真実~

アニー・ジェイコブセン、田口俊樹・訳、太田出版

2013.3.15  12:00 am

 ラスベガスの北120kmにある軍事施設エリア51の謎に、ジャーナリストが迫ったノンフィクション。エリア51の存在を米政府は認めておらず、地図にも載っていないという。このエリア51をめぐる最大の話題は、UFOの墜落と宇宙人の遺体回収で知られる「ロズウェル事件」。筆者は、エリア51近郊に住んだり、勤務していた関係者、エリア51で進めされたプロジェクトに参加した科学者たちの証言をもとに、ロズウェル事件だけではなく数々の謎を解明していく。
 本書の取り上げる話題は豊富である。特に1947年に起こったロズウェル事件の謎解きは刺激的で、この部分だけでも本書を読む価値はある。そのほか、スチルス偵察機、無人偵察機、大気圏核実験、ミグ戦闘機のリバースエンジニアリングと墜落、プルトニウムを使った人体実験、月面着陸捏造など、東スポ的な話題は尽きない。米ソ冷戦時代の米国とソ連の駆け引きがよく分かるし、ナチスドイツの技術の高さを改めて知らされる内容になっている。
 ちなみに米国政府は軍事施設エリア51について、ほとんど情報を公開しない。公開しても黒塗りの場合が多く、得られる情報は限られている。米国大統領さえ「情報適格性がない」として拒絶されるなど、情報管理は徹底していえる。その黒幕は、原子力委員会というのが筆者の見立てだ。
 牽強付会な部分もあるが、ゴシップ記事を読むのと同様の楽しさを味わえる書である。暇つぶしにピッタリだが、行間が狭く1ページにぎっしり文字が詰まっているし500ページを超える分量があるので、新幹線で東京-大阪間で読み終えるのは辛いかもしれない。

書籍情報

エリア51~世界でもっとも有名な秘密基地の真実~
アニー・ジェイコブセン、田口俊樹・訳、太田出版、p.536、¥2,520

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。