訣別 ゴールドマン・サックス

グレッグ・スミス、徳川家広・訳、講談社

 筆者は、20代後半でバイス・プレジデントに就くなど、若くしてゴールドマン・サックスの幹部に昇進したエリート。本書は、筆者がスタンフォード大学在学時代のインターン経験から、リーマンショック以降に拝金主義がはびこるようになった社風に疑問を抱いて退社するまでを詳細に描いた手記である。ウォルストリートの住人たちの生態を余すことなく描いており、米国の金融業界に関心のある方には必読の1冊といえる。特に上司との関係やオフタイムの生活の描写は興味深い。逆にウォールストリートに関心がない方には、400ページを超える大著なので読み進むのが苦痛かもしれない。
 筆者が入社したのは同時多発テロ発生直前の2001年。当時のゴールドマン・サックスには、「長期的に貪欲であれ」と、顧客の利益を優先することが長期的には会社のためになるという考え方が残っていたという。ところがリーマンショック以降は、ボーナス至上主義が蔓延し、短期的な利益に飛びつく社風に変わっていった。社員は上層部から新入社員まで顧客を食い物にする状態だった。例えば新人アナリストが顧客を「マペット」と呼び、好きかってに操れる対象と見くびり、自分よりも知性の劣った人間として扱うまでになる。顧客の世話を焼く受託者責任感の強い営業マンは絶命危惧種だと、筆者は言い切る。
 こうした状況に筆者は12年間勤めたゴールドマン・サックスを辞めることを決意する。同時に、退社するまでの経緯を綴った手記「Why I Left Goldman Sachs」(タイトルは本書と同じ)を米ニューヨークタイムズ紙に寄せる。この手記は、筆者の退社直後の2012年3月14日に掲載される。この手記に大幅に加筆したのが本書である。

書籍情報

訣別 ゴールドマン・サックス
グレッグ・スミス、徳川家広・訳、講談社、p.458、¥1,995

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役に就任。現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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