秋葉原、内田ラジオでございます。

内田久子、廣済堂出版

 本書に触発され、この日曜日に秋葉原ラジオセンター2階「内田ラジオ」に立ち寄った。ラジオセンターにはそこそこお客さんはいたものの、内田ラジオに人影はない。店内に並ぶクラシカルなラジオやパーツは興味深く拝見したが、残念ながら筆者である店主・内田久子さんの姿は見えなかった。本書は大正15年生まれの内田さんの自伝だが、ラジオパーツの店主にこんな人生があったとは驚愕だ。電気街全盛の古き秋葉原を懐かしく思い出す方は必読である。ただし秋葉原の昔話だけを期待しては失望するかもしれない。「そんなこともあったなぁ」と昭和という時代全体を懐かしむのに向く。
 慶長5年が開湯した箱根・塔ノ沢の温泉旅館「環翠楼」に生まれた筆者。環翠楼の名前は伊藤博文がつけるなど由緒ある名旅館である。子供時代の思い出に始まり、パイロットだった父親の教え、2.26事件の記憶、東京裁判の傍聴、連合赤軍が起こしたダッカ事件の飛行機のパイロットだった長兄から聞いた裏話、ナムジュン・パイクら文化人との交流など、興味深い話が次々に登場する。波乱の人生といった感じではないが、深みを感じる逸話が多い。
 夫の内田秀男の話も実に面白い。NHK技研の技師だった内田は根っからのラジオ技術者で発明家。その縁が秋葉原の内田ラジオへと続く。ちなみに内田は超常現象に興味を持ち、「オーラメーター」や「イオンクラフト円盤」といった研究でTVにも頻繁に出演していたという。

書籍情報

秋葉原、内田ラジオでございます。
内田久子、廣済堂出版、p.183、¥1,365

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役に就任。現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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